【The AI Conference 2025】2025年AIコーディングエージェントがもたらすソフトウェア開発の未来

By Jay Revels CEO, Ichizoku株式会社

本記事は、Together AI の Dan Fu 氏講演をもとに、2025年がAIコーディングエージェント実用化の転換点である理由と、日本企業が「どう活用するか」の実装指針を簡潔に整理します。GPUカーネル最適化/運用の作法/生産性インパクトに焦点を当てます。


重要なポイント
  • 転換点の到来
    2025年は品質と実用性が飛躍。課題は「導入の是非」ではなく活用設計。
  • GPUカーネルの要
    高速・低コスト化の鍵だが人材希少。エージェント活用で開発を加速。
  • 運用の作法が成果を左右
    小分割のタスク設計/伴走型フィードバック/環境整備/過不足ない関与が効果を最大化。
  • 生産性の実証
    数週間→数日〜数時間へ短縮し、事例では手書きアセンブリを上回る性能も。人は設計・問題解決に集中。

2025年9月にシリコンバレーで開催されたThe AI Conference 2025に参加した際のレポート「Silicon Valley Trip Report #03 The AI Conference 2025 シリコンバレーから学ぶ日本への示唆 – 業界を牽引するリーダーたちが語る、世界の AI潮流と日本企業の次の一手 -」から抜粋しお届けします。フルバージョンはこちらからダウンロード頂けます。


2025年 AIソフトウェア開発が迎える転換点

サンフランシスコで開催された The AI Conference にて、Together AIのVP of KernelsであるDan Fu(ダン・フー)氏の講演を聴講しました。メッセージは明快で、「2025年はAIコーディングエージェントの品質と実用性が飛躍的に高まる転換点である」という内容でした。

特に日本企業が直面するエンジニア不足や生産性向上の課題を考えると、AIコーディングエージェントの導入は「導入するなら」ではなく「どう活用するか」が問われています。

GPUカーネルとは?なぜ重要なのか

Fu氏のチームはGPUカーネルの開発に取り組んでいます。GPUカーネルとは、行列計算やアテンション機構、正規化といった AIモデルの基礎的な演算をGPU上で効率的に実行する低レベルプログラムのことです。

簡単に言えば、優れたGPUカーネルはAIモデルの学習や推論を高速かつ低コストで実現するカギとなります。しかしカーネル開発の専門スキルは非常に希少で、人材不足が大きな課題です。そこでTogether AIはAIコーディングエージェントを用いてこのプロセスを加速できるかを検証しました。

AIコーディングエージェント活用の実践知

講演で特に印象的だったのは、「AIコーディングエージェントをどのように管理すれば最大の成果が得られるか」という具体的な知見でした。Fu氏はこれを 「新人エンジニアを育成するのに似ている」 と表現しました。

1. タスクを小さく分割する

  • 「新しいシステム全体を作れ」と丸投げするのではなく、小さく明確なタスクに分けて依頼する。
  • ステップごとの実行計画を与えることで、精度が格段に向上する。

2. 放置せず伴走する

  • AIを「任せっぱなし」にすると期待外れの結果になりやすい。
  • 定期的に進捗を確認し、修正やフィードバックを与えることが成功のカギ。

3. 必要なツールと環境を与える

  • サンドボックス環境、テスト用データ、分かりやすいドキュメントを整備する。
  • Together AIでは「AIがAI向けにドキュメントを書く」という仕組みを導入し、次のエージェントが効率的に学習できるようにしている。

4. 管理スタイルのバランス

  • コードの1行1行までマイクロマネジメントするのは逆効果。
  • かといって完全放置も危険。適切に関与しつつ、自由度を残すことが重要。

生産性の転換

Together AIではAIコーディングエージェントを導入することで、数週間かかっていたGPUカーネル開発が数日から数時間で可能になりました。中にはNVIDIAの手書きアセンブリコードを上回る性能を出した事例もあります。

ソフトウェアエンジニアリングにおける人材不足が深刻化している日本のエンジニアリング組織にとってこれは大きな意味を持ちます。AIコーディングエージェントは人間を置き換えるものではなく、エンジニアの能力を数倍に引き上げる「能力増幅装置」です。エージェントに反復的なコーディングを任せ、自身の専門性をアーキテクチャ、設計、問題解決に集中させることができるのです。

日本企業への示唆

AIソフトウェア開発を取り入れる日本企業にとって、次のポイントが重要です。

  • 小さく始める:リスクの低いモジュール開発から導入
  • 人間の監督を前提に:AIは「部下」ではなく「共同作業者」として扱う
  • 役割の再設計:エンジニアはコードを書くよりも、AIエージェントを管理・指導する役割へシフト
  • 安全性と信頼性:サンドボックスや権限設計を徹底し、生産性とガバナンスの両立を図る

最後に

Fu氏が最後に語った言葉が印象的でした。

「1912年の自動車が馬のように振る舞えなかったことを理由に、その価値を疑う人もいた。しかし100年後の自動車は世界を変えた。同じことがAIコーディングエージェントにも言える。」

AIと人間が共にソフトウェアを作る時代は、すでに始まっています。日本企業が今取り組むべきは、導入の可否ではなく、「いかに効率的に組み込むか」です。早く着手する企業こそが、次の10年の競争優位を手にするでしょう。


【FAQ】よくある質問

1. GPUカーネルとは? なぜ重要ですか?

行列計算・アテンション・正規化などをGPUで効率実行する低レベルプログラム。学習・推論の高速化と低コスト化の鍵です。

2. AIコーディングエージェントは何を変えますか?

GPUカーネル開発を加速し、所要時間を数週間→数日〜数時間に短縮。人はアーキテクチャ設計・問題解決へ専念できます。

3. 成果を出す運用上のコツは?

小さな明確タスクへの分割、定期的な伴走とフィードバック、サンドボックス/テストデータ/ドキュメントの整備、過度でも放置でもない関与です。

4. 実力の目安はありますか?

事例では手書きアセンブリ(NVIDIA)を上回る性能が出たケースも報告。品質と実用性が転換点に達しています。

5. 日本企業はどう始めるべき?

小さく始める(低リスクのモジュールから)、人間の監督を前提に協働させ、役割を再設計(エージェントの管理・指導へシフト)。権限設計とサンドボックスで安全性も両立します。

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