AI導入でCFOがこれから直面すること

By Jay Revels, Ichizoku株式会社 CEO

本記事は、CFOがAI導入で直面する汎用AIアシスタントとポイントソリューションの限界を整理し、バックグラウンドエージェントで例外処理まで自動化するAIネイティブな進め方を解説します。


重要なポイント
  • 汎用AIアシスタントが残すコスト:連携しないエージェントが乱立し、残るのは高額なトークン請求と引き取り手のない技術的負債
  • ポイントソリューションの限界:万人向けのソフトは自社の例外処理を理解できず、従業員は出力の修正に追われ、ROIは15%未満
  • 担当者こそが価値の源泉:画面間の転記や照合、催促をこなす担当者の業務こそ、業務のサイクルタイム短縮の要
  • バックグラウンドエージェントの自律実行:請求書と発注書の照合から承認までを、人の指示なしでPCを開く前に終える自動処理


まずは汎用AIアシスタント

各部門のシニアマネージャーは、Microsoft CopilotやClaude Coworkを全員が利用できるようにします。しかしこれには問題が伴います。

従業員一人ひとりが3つほどのエージェントを立ち上げますが、エージェントは連携していないため、3か月もすると多額のトークン利用料が発生してしまいます。さらにエージェントの約8割は使われなくなるか、本番環境で頻繁に不具合を起こすようになります。

高額なトークン請求と引き取り手のいない技術的負債の山が残ってしまいます。

次にポイントソリューション

各部門のシニアマネージャーは、優先度の高い業務ごとにAIツールを導入します。経理部門なら経費精算ツール、オペレーション部門なら業界レポート作成ツールなどです。しかし、これもうまくいきません。

万人向けに設計されたソフトウェアは、自社向けには作られていないため、経費精算が4ステップではなく7ステップで構成されているなど、独自の例外処理ルールを理解できません。レポート作成ツールも同様です。十分な参照リンクを提示できず、結局は誰かがAIの出力を修正する作業に多くの時間を費やすことになります。

その結果、従業員はツールを使わなくなるか、使ったとしてもROIは15%未満にとどまります。さらに残念なことに、「以前のやり方のほうが良かった」という不満が現場から上がり、半数近くの従業員は新しいツールを以前より使いにくくなったと感じます。

私の仕事はこの2つのアプローチを各社にあわせてどのように組み合わせるべきか、CFOの皆様にお伝えすることです。

汎用AIアシスタントによって、人間の仕事がなくなるわけではありません。一人が10人分の仕事をこなせるようにするためのものであり、価値があるものです。しかし導入するだけではAIの本当の可能性を活かし切れません。

その可能性を引き出すのが、Ichizokuのバックグラウンドエージェントです。バックグラウンドエージェントは、人間が指示を出したり操作することなく、自律的に業務を実行します。請求書が届いた瞬間に内容を読み取り、対応する発注書(PO)と照合し、問題がなければ自動で承認し、判断が必要なものだけを担当者へ回付する。こうした一連の処理が、PCを開く前に完了します。他にも、ナレッジベースへ新しいデータソースが追加されると、自動的に内容を分析し、最新の調査レポートへ反映するエージェントも提供しています。

人間が指示をする必要はありません。エージェントはバックグラウンドで動き続け、必要な作業は出社するまでに完了します。

なお、Ichizokuは企業のオペレーションチームと連携し、既存の業務システム上で動くAIエージェントを構築・導入しています。

汎用AIアシスタント(Claude Cowork、Microsoft Copilot)が機能しない理由

AIエージェントには、ガードレールと権限管理が必要です。包括的なAI監査に基づいて、エージェントが実行できる操作をあらかじめ定め、その範囲内だけで動作するようにします。各タスクは可能な限り決定論的な処理へ分解し、ワークフロー全体ではなく、判断が必要なステップだけをモデルに任せます。このような設計にすることで、97%以上の精度を維持でき、エージェントのトレースは監査担当者や経営層にそのまま提示できるようになります。

また、汎用AIアシスタントは、実際の業務で使われているワークフローに合わせて設計されていません。そのため、どの工程にAIが必要かを見極められず、すべてのステップを一律にAIで処理してしまいます。例えば、ワークフローの最初のステップが「メールを受信すること」で、メールの件名が毎回同じであるなら、この処理にAIは必要ありません。パターンが常に同じなら、AIに判断させる必要はないためです。

このようなケースは、常に同じ結果を返すルールベースの決定論的な処理に任せるほうが適しています。99.9%の確率で同じ結果が得られる処理をわざわざAIに置き換える必要はありません。ワークフロー全体の精度は、各ステップの精度の積み重ねで決まるため、AIを使うべきかどうかは、ステップごとに個別に判断する必要があります。

汎用AIアシスタントでは、工程ごとに精度を管理するようなカスタマイズができません。ワークフローのすべてのステップでAIを使うため、全体の完了精度が低下するリスクが高まり、トークン利用料も増えてしまいます。本来AIを使う必要のない処理にまでAIを使い、不要なコストを支払うことになるのです。

ポイントソリューションを増やすほど、事態が悪化する理由

今度は汎用AIアシスタントを諦め、業務ごとにAI SaaSの専門ツールをいくつも導入し始めるとします。リサーチにはExawizards、営業オペレーションにはGivery、建設業向けにはHikari。SalesforceやSAPに組み込まれたAIエージェントを導入する場合もあるでしょう。

既にお気付きかと思いますが、AIは本来、異なる役割を持つ何十ものソフトウェアを使い分ける状況から脱却するためのものだったはずです。必要なのは、既存システム全体を一元的に見渡せる環境です。エージェントが動作するために必要な情報は、すでに既存システムの中に揃っており、新しいプラットフォームを導入する必要はありません。

ところが現実では、CFOはソフトウェアライセンスをさらに増やし、チームがログインして管理しなければならない画面ばかりが増え、期待したほどの業務効率化は得られない状況に陥っています。
ポイントソリューションは業務を肩代わりしているのではなく、担当者に道具を増やしているにすぎません。現在のツールは各業務のごく一部を自動化できますが、工程と工程をつなぐ担当者の業務は自動化できていません。

担当者は画面から画面へ数値を転記し、2つの数字が一致しているか確認し、一致しなければ催促メールを送り、返信がなければエスカレーションします。この担当者こそが業務全体をつなぐ要であり、本当に価値が生まれるのはこの部分です。ここを効率化できれば、業務のサイクルタイムが短縮され、より短時間でより多くの売上を生み出すことが可能です。

また、例外が発生した場合は、人間が介入してプロセスを前に進めなければなりません。例外は想像する以上に頻繁に発生し、企業によっては毎月何百件も処理しています。ポイントソリューションは、企業ごとに異なる例外処理まで考慮して設計されていないため、定型的な作業の一部は自動化できても、本当に難しい仕事は依然として人間が担うことになります。

これが、多くのAIツールでROIが当初の期待を下回る理由です。

AI導入の未来。AIネイティブであるということ

AIネイティブなAI導入とは、AIエージェントがバックグラウンドで動き、単純な作業を自動化するだけでなく、例外を検知し、処理まで実行できるよう設計されている状態を指します。

エージェントは、通常のパターンから外れた場合にどのような処理を行うべきか、あらかじめプログラムされます。それでも判断ができない場合は、Slackを通じて担当者に最も可能性の高い2つの選択肢を提示し、どちらが正しいかを確認します。必要な情報が整理された状態で提示されるため、これまで30分かかっていた調査は、30秒で「はい」か「いいえ」を判断するだけの作業へ変わります。

実際にどのように実装するか

Ichizokuでは、以下の5項目を必ず実行します。

1. 実際の現場で業務プロセスを可視化する

Forward Deployed Engineerが現場に入り込み、業務プロセスを最初から最後まで可視化します。文書化されたプロセスやSOP(標準作業手順書)が整備されていても、それだけでは現場の実態は見えてきません。実際には「問題が起きたら、まずこのスプレッドシートを確認する」「アラートは3年前から壊れたままなので、野村さんに直接メールする」といった運用が日常的に行われています。これは、私たちが実際の現場で何度も耳にしてきた話です。

2. エージェントは既存ツール上に構築する

エージェントはすでに利用しているツール上に構築します。エージェントは新入社員と同じようにNetSuiteやSAP、Salesforceへログインし、人間と同じ画面を操作し、同じAPIを利用して業務を実行します。そのため、新しいUIを覚えたり、システムを移行したりする必要はありません。

3. 業務を実行するエージェントを作る

ダッシュボードではなく、業務を実行するエージェントを作ります。多くのAIツールは、データを集約しリサーチする、または簡単な分析を支援することに重点を置いています。しかし生産性を大きく向上させるのは、そのようなツールではなく、バックグラウンドで動作し、業務そのものを最初から最後まで実行するエージェントです。

4. 人間の判断が必要なときだけエスカレーションする

エージェントは本当に判断が必要な場合にだけ担当者へ確認を求めます。また、運用を重ねるにつれ、エスカレーションの精度も高めていきます。目標は、パターンマッチングだけで処理できる70〜85%の作業をチームの手から取り除き、レバレッジが高く判断を要する業務に集中できる状態を作ることです。

5. 部門全体への展開を前提に設計する

最初から部門全体への展開を前提に設計します。これは、AIエージェント導入で最も見落とされがちなポイントです。エージェントは一人の担当者のためではなく、部門全体で利用できることを前提に設計しなければなりません。各担当者が個別にエージェントを作り、それぞれが連携しない状態ではワークフローは分断され、かえって運用は複雑になります。私たちはプロジェクト初日から部門全体を対象に、業務をエンドツーエンドで実行できるエージェントを設計・構築します。

何から始めるべきか

まずは、自社のプロセスオーナーを見つけることから始めます。現在の業務プロセスを細部まで理解し、以下の点について徹底的に掘り下げて確認します。(サブプロセスの担当者やアナリスト、現場担当者などにも話を聞く準備を整えておきます。)

  • 現在の業務はどのような流れで進んでいるか(日常的なワークフローの詳細)
  • 各タスクで扱うデータ量や処理量(スループット)はどの程度か
  • 各工程のエラー率、エラー1件あたりのコストはどのくらいか
  • 例外はどのような形で発生し、どのように処理されているか

新しいプラットフォームを導入したり、データサイエンスチームを立ち上げる必要も、1年をかける必要もありません。本当に必要なのは、現場に入り込み実際のワークフローを理解したうえで、既存システムの中にエージェントを組み込み、その効果を各段階で継続的に測定できる人材を見つけることです。

これこそが私たちIchizokuが行っていることです。お客様のチームの一員として、バックグラウンドで動くAIエージェントを既存システム上に構築します。新しいインターフェースを覚える必要も、大規模なシステム移行もありません。AIで業務変革を進めたいとお考えでしたら、ぜひ Ichizoku にご相談ください。


【FAQ】よくある質問

1. 汎用AIアシスタントを配布するだけでは、なぜうまくいかないのですか?

従業員が個別に立ち上げたエージェントが連携せず、トークン利用料がかさむためです。約8割は使われなくなるか、本番環境で不具合を起こすようになります。

2. ポイントソリューションのROIが期待を下回るのはなぜですか?

万人向けのツールは自社独自の例外処理を理解できず、出力の修正に時間を費やすためです。工程と工程をつなぐ担当者の業務や、頻発する例外までは自動化できません。

3. バックグラウンドエージェントは何をしてくれるのですか?

人間が指示や操作をしなくても、請求書の読み取りや発注書との照合、承認などを自律的に実行します。判断が必要なものだけを担当者へ回付し、出社前に一連の処理を終えます。

4. エージェントの導入に、新しいプラットフォームは必要ですか?

必要ありません。エージェントは既存のNetSuiteやSAP、Salesforceにログインし、人間と同じ画面やAPIを使って業務を実行します。

5. AI導入は何から始めればよいですか?

自社のプロセスオーナーを見つけることから始めます。そのうえで、業務の流れやデータ量、各工程のエラー率、例外の発生と処理方法まで、細部まで掘り下げて確認します。

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